桜が咲き始めると、ソワソワして、行けるところにある桜の名所を思い出し、あっちにも行かなきゃ、こっちにも行かなきゃ、と落ち着きがなくなる。 次の休みの日には、あそことあそこに行って、と予定を入れて、また忙しくしてしまう。 昨日、仕事の帰りに、少し遠回りをして川沿いを歩いていたら、桜の木が2本、ポツンと立っていて、可愛い花がたくさん咲いていた。 近づいて、一つの花をじーっと見ていたらね、あ!気付いたよ。私って欲張ってた。 そんなに桜の名所、巡らなくていいんじゃない?近くにこんなに可愛い桜が見られるんだもの、十分だよね。 何十本もの桜の木が並んでいたら、さぞかし綺麗だろうけれど、一つ一つの桜の花だってこんなに可愛い。立ち止まって、近づいて、ジーッと見つめて、対話をする方が好きだった。 桜の名所に行くのは、日曜日に家族でちょっと豪華な外食をするようなもの。 あちこち行きたくなるのは、お気に入りのケーキ屋さんで、どれにしようか迷って、あれもこれも食べたいって欲張るようなもの。 たくさん食べ過ぎて、胸焼けがして、ああ、一個にしとけばよかったって思うんだ。 桜の木の下には、タンポポが微笑んでいる。桜の名所では、しゃがんでタンポポに話しかけたりできないよね。 桜の側には、春の野草が勢ぞろい。川では鴨の親子が仲良くお散歩してる。 ああ、私はこっちの暮らしが本当に好きなんだ。 人目に付かない、静かな場所でのんびりと、自然との対話を楽しみたい。 ケーキ屋さんでは、いつものお気に入りのケーキを一個だけ味わって食べる。 服は、お気に入りの一着を毎日大切に着る。 野草探しだって、珍しい野草を必死に探してるわけではなく、…
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